033217 ランダム
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いっぱいのお運びありがとうございます

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てれすこ

てれすこ

ある日漁師が見たことも無い魚を釣り上げた。
「何という魚かお役人に聞いてみるベエ」
早速奉行所に持って行ったが漁師が解からない物を役人が解かる訳が無い。そこでその魚の絵を描いて『この度このような珍魚が獲れた。この魚の名前を知っているものは申し出よ。褒美として100両つかわす。』と高札を建てた。

すると一人の男がまかり出た。
「おもてをあげい、名は何と申す」
「多度屋茂兵衛と申します」
「なりわいは?」
「はい、親代々魚の卸業を営んでおります」
「なるほどそれで魚に詳しいのだな。で、これは何という魚じゃ?」
「てれすこ、と申します」
「なに、てれすこ?」
変だなと思いましたが、何しろ知っているものがいません。約束どおり100両支払いました。
どこにも疑い深い人がいるもので
「その魚を干してみよ」
乾燥した魚の絵を描き『又このような魚が獲れた。名を知っているものは名乗り出よ。褒美に100両つかわす』

又も多度屋茂兵衛がまかり出た。
「それは、すてれんきょうと申します」
「控えよ、多度屋茂兵衛。これは以前そちがてれすこと言った物を干しただけだ。いちどならず二度までお上をたばかる不届き者。打ち首申し付ける」

昔は控訴なんてありませんからこうなってはどうにもならない。
最期に家族と会うのが許されました。乳飲み子を負ぶったおかみさんに涙を流しながら
「私は死んでしまうが、心残りは息子のこと。どうか立派に育てておくれ。この子が大きくなっても決してイカの干したのをスルメと言わすなよ」

多度屋茂兵衛、即刻釈放になりました。



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